市街化調整区域の不動産を売却する完全ガイド|売りにくい理由から成功のポイントまで

市街化調整区域 売却 売却

不動産売却が成功するかどうかは不動産の立地や需要がカギとなりますが、市街化調整区域内にある多くの不動産は早期売却しにくいという特徴があります。
そのため売主は不動産業者に査定を依頼する前に物件がどの区域にあるのか確認する必要があり、自治体の都市計画課やインターネットであらかじめチェックしておくことがポイントです。
ただし、市街化調整区域内の物件であっても条件が整えばすぐに売れることもあり、売却しやすい物件の特徴も知っておくことが大切です。
この記事では市街化調整区域内の不動産を売却するためのコツや注意点について、解説します。
調整区域にある土地や建物を処分したいと考えている売主は、参考にしてください。

市街化調整区域とは?

市街化調整区域とは都市計画法で都市計画区域内にある区域のことで、無秩序な市街化の抑制や農地や緑地の保護などを目的に定められています。
道路を渡ると発展した街から広大な田畑が広がる光景を目にすることがありますが、市街化調整区域はこのように市街地に隣接しているエリアであることが多いです。
地方だけでなく東京や大阪といった大都市にも存在しており、同じ都市計画区域である市街化区域と合わせて設定されるケースが一般的です。
この章では市街化調整区域の特徴について、詳しく解説します。

市街化調整区域とは何か。(都市計画法第7条第3項)|福岡市

市街化区域との違い

都市計画法に定められた区域には市街化調整区域以外にも市街化区域、非線引き区域があり、市街化区域にある不動産は開発許可などの要件がなくスムーズに売却することが可能です。
市街化区域は「既に市街地となっている区域もしくは今後10年以内に優先的に計画的に市街化を図る区域」と定められており、街づくりを促進していくエリアです。
用途地域による建築物の制限はあるものの市街化調整区域よりも建築確認許可は取得しやすく、電気や水道といったインフラが整っていることから生活しやすいという特徴があります。
このことからも、都市部で利便性の良い暮らしをしたいという買主にとっては市街化区域の方が希望条件に合う物件が公開しやすく、郊外の田舎に住みたいという買主であれば市街化調整区域の方がおすすめの物件が公開されやすくなります。

市街化調整区域が生まれた背景

快適に暮らせる街にするためには全ての土地を都市にするのではなく、「街」と「自然」にエリアを分けて開発することがポイントです。
市街化調整区域は自然環境や農地を保護し乱開発を抑制することによって意図的に人口が増加しないようコントロールされているエリアとなっており、市街化区域に人口が流入するように様々な制限が設けられています。
もし市街化調整区域がなければ市区町村のあらゆる場所で都市が形成されてしまい、効率を無視してインフラの整備や小中学校の建設をしなければなりません。
このように、街づくりを進めることで人が住む場所をコントロールしやすくなり、効率の良い都市を形成するためにも市街化調整区域は必要といえます。

市街化調整区域のメリット・デメリット

市街化調整区域にある土地は固定資産税の支払いが市街化区域よりも安く、維持費の負担が軽いというメリットがあります。
なぜなら郊外に位置する市街化調整区域は市街化区域よりも評価額は低く設定されやすく、さらに都市計画税も免除されるからです。
一方、売却価格は市街化区域よりも安くなってしまい、市街化区域よりも買い手が少ないというデメリットもあります。
このような理由から、市街化調整区域の不動産を売却するためには工夫が必要になるといえ、市街化調整区域の不動産売却に強い不動産会社を選ぶことがポイントといえます。

市街化調整区域の専門買取業者|ウルホーム

市街化調整区域の不動産が売却しにくい理由

市街化調整区域は需要があまりないため売却がしにくいという特徴がありますが、需要以外にも売却しにくい理由があります。
また、買い手が購入しようとしても住宅ローンが通らないという問題が発生することもあります。
このように市街化調整区域は不動産売却において難易度の高いエリアだといえることから、売れ残る理由を正しく把握し対策することがポイントです。
この章では市街化調整区域の不動産が売却しにくい理由について、解説します。

建築や増改築の制限が厳しい

市街化調整区域が売却しにくい最も大きな理由として、建築制限が厳しいという要件があります。
たとえば市街化区域であれば地目が雑種地や農地であっても建築することは可能ですが、市街化調整区域の場合は宅地でなければ原則建築許可を得ることはできません。
また、宅地であっても線引き前から宅地であるなどを証明する必要があり、該当しなければ一般住宅の建築はできなくなってしまいます。
そのため現存している家屋を解体して更地にしてしまうと二度と再建築できない土地になってしまうことも多く、知らずに解体して売却できないというケースも少なくありません。

住宅ローン・融資が通りにくい

住宅ローンを組むためには金融機関の審査を通過する必要がありますが、市街化調整区域内の不動産は担保評価が低く、抵当権設定することができないと判断する金融機関も多いです。
抵当権設定できない物件に対して融資することは金融機関にとって大きなリスクとなりますので、希望融資額よりも大幅に減額されたり否決になるケースもあります。
この場合、買主は自己資金を想定よりも多く捻出して物件を購入することになり、資金計画が成り立たなくなることも少なくありません。
このように買主の資金準備が難しいというポイントも、市街化調整区域内の不動産が売れない理由といえます。

インフラが未整備で利便性が低い

電気や上下水道、道路の舗装といったインフラは住民が多く利便性の高いエリアから優先的に整備するため、市街化調整区域は後回しになることが多いです。
これにより市街化調整区域内の不動産は周辺に街灯が少なかったり道路がガタガタだったりすることがあり、買主の印象が悪くなってしまいます。
さらにコンビニやスーパー、美容院といった生活にかかせないライフインフォメーションも整いにくい環境であることから、将来的な街の発展も期待できないこともあります。

農地転用の許可取得が難しい

一般住宅を建築する場合は地目が「宅地」である必要がありますが、田や畑といった地目の土地も多く公開されています。
地目が田、畑の土地は原則農家しか購入することができず、農業住宅用地や農機具置き場といった活用方法でしか売却できないことが多いです。
そのため田畑を別の用途で利用するために農業委員会へ農地転用の届出を行い、許可を得る必要がありますが、市街化調整区域内の農地転用は非常に難しく、特別な理由がなければ一般住宅建築のために許可を取得することはできません。
なぜなら市街化調整区域は「農地を保護し人口増加を抑制する」という目的があるからであり、許可を出してしまうと農地が減少して人口が増加してしまうからです。
このような理由から、市街化調整区域内にある田畑の売却は非常に難しくなっています。
なお、市街化区域にある田畑は農業委員会の許可は必要なく、「届出」を提出し建築後に地目を宅地に変更登記するだけで一般住宅を建築することができます。

市街化調整区域でも売却しやすい不動産の特徴

市街化調整区域は一般的に不動産が売却しにくいエリアとなっており、相続や贈与を躊躇する人もいます。
しかし全ての不動産が売却できないわけではなく、条件が揃えば早期売却することも可能です。
この章では市街化調整区域内であっても売却しやすい不動産の特徴を紹介します。

既存宅地や開発許可を得やすい土地

既存宅地とは市街化区域と市街化調整区域に分けられる前から宅地となっている土地のことで、昭和45年11月23日よりも前に宅地であれば既存宅地が認められます。
自治体によっては昭和50年までに宅地申請が出ていれば既存宅地として認められるなど独自のルールが設定されていることもありますので、不動産売却をスタートする前に確認することをおすすめします。
また、自治体から分譲地として開発許可を得られる可能性が高い地域であれば開発業者が購入することもあります。
ただし、どちらの要件も最低敷地面積や周辺に50戸以上の家屋が存在するといった要件をクリアする必要があり、トラブルを避けるためにも事前に自治体へ相談することがポイントです。

市街化区域の周辺で利便性がある物件

市街化区域に近いエリアであれば利便性は高いといえるため、需要は高くなります。
特に市街化区域と市街化調整区域を分ける道路沿線上は通称「ロードサイド要件」が適用される可能性が高くなり、美容院やコンビニといった地域貢献できる商業施設であれば許可を得やすくなります。
これにより既存宅地や開発許可の条件をクリアできない土地であっても、売却できることがあります。

地目が田畑ではない物件

市街化調整区域において農地転用の許可取得は非常に難しく、事業用地として何ヶ月も準備しなければ買い手が購入できないのが現実です。
そのため地目が田畑ではないことが市街化調整区域内の不動産売却において重要なポイントといえ、田畑以外であれば売却できる可能性は模索しやすいといえます。

市街化調整区域の不動産を売るための具体的ステップ

市街化調整区域内にある不動産を売却するためには様々な問題をクリアする必要がありますので、売主としてやるべきことを正しく把握しておくことが大切です。
この章では、市街化調整区域内の不動産を売却するための具体的なステップを紹介します。

専門知識を持つ不動産会社を選ぶ

どのような不動産売却にも共通しますが、不動産会社の販売戦略が早期売却のカギといえます。
特に市街化調整区域は人口が抑制されるよう様々な制限があることから、調整区域にある不動産売買を得意とする不動産会社に依頼することが重要です。
そのためにも一括査定サイトなどを利用し、複数の不動産会社から査定と売却プランの提示を受ける必要があります。

行政調査を実施し、開発許可や農地転用を把握する

自治体や国土交通省が公開しているデータを閲覧し、開発許可や農地転用の許可を得られる可能性を模索することは、少しでも早く、高く不動産を売却するうえで重要なステップです。
ただし専門的な内容が多く理解が難しい場合は不動産会社に委任し、売却するための計画を立案してもらうことをおすすめします。

売却条件を明確化し、ターゲットを絞る

市街化区域と違って市街化調整区域はターゲット層が少なく、漫然と広告を出すだけでは反響を得られにくくなります。
そのためどのような顧客であれば購入してくれるのかペルソナを設定し、仮説に沿った広告戦略と販売戦略を立てることが大事です。
不動産会社を選ぶ際にも、購入顧客を一番イメージできるプランかどうかで判断するのがおすすめです。

仲介だけでなく買取も検討する

不動産売却には「仲介」と「買取」の2種類があり、物件をインターネットや紙媒体を活用して顧客を募集する仲介で売却が難しければ買取を検討することがポイントです。
買取は仲介と違って不動産会社が直接買主となるため販売期間がほとんどなく、さらに仲介していないことから仲介手数料がかかりません。
また、買取業者によっては確定測量や解体をすることなく引き渡すことができますので、諸費用を大きく削減することができます。
買取価格は通常の売却価格よりも安くなりやすいというデメリットはありますが、確実に売却できるというメリットがありますので処分に困っている人に向いている売却方法です。

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売却が難しい場合の活用法を検討しよう

売却が難しい不動産は一度売却することを中止し、土地活用に切り替えるという方法もあります。
この章では市街化調整区域内の代表的な土地活用事例を紹介します。

太陽光発電や資材置場などで活用する

太陽光発電や資材置き場は地域貢献に直結するため一般住宅よりも許可を得やすくなり、農地転用の許可についても農業委員会は積極的に検討してくれます。
特に山間部の傾斜地や休耕地は太陽光発電システムの設定に向いていることから、太陽光業者に相談しながら活用の可能性について模索することがポイントとなります。

駐車場や家庭菜園として賃貸に出す

駐車場としての活用は設備投資が少なく、エリアによっては高収益を期待することもできます。
現況が田畑でなければどのような地目であっても許可不要でスタートできるという点も魅力となっており、売却と並行して駐車場運営を継続するという売主もいます。
これ以外にも趣味の家庭菜園として活用するという方法もあります。

整備を行ってから再度売却を検討する

農地や高低差のある土地は許可が取得できる場合であっても買い手がつきにくく、販売が長期化してしまいます。
そこで土地をフラットな状態に造成してから再販売するという方法を選択し、キレイな新規物件として公開することで反響を集めやすくなります。
ただし造成費は自己資金から捻出することになりますので、売却価格とのバランスについては不動産会社と十分に協議する必要があります。

まとめ

市街化調整区域は市街化区域よりも建築に関連する制限が厳しく、買い手の住宅ローンが通らないといった問題も発生しやすいことから売却しにくいエリアとされています。
特に地目が田畑だと農地転用の許可が必要となり、売主と買主は何ヶ月もかけて準備しなければなりません。
一方、物件によっては市街化区域と変わらないスピードで売却できることもあり、既存宅地や開発許可を取得できる不動産は高値売却が期待できます。
このように市街化調整区域内にある不動産売却は工夫が必要になるケースが多いことから、売却を検討する際にはなるべく早い段階で不動産会社に相談することをおすすめします。

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