相続した空き家を売却するときのポイントは。手順や税金についても解説

相続空き家の売却手順 売却

相続した空き家を売却する際には、いくつかポイントがあります。
この記事では売却に関するポイントと手順、税金について解説します。
空き家を相続した人やこれから相続する予定のある人は、参考にしてください。

この記事で分かること
相続した空き家を売却した方が良い理由
空き家を売却する際のポイント
相続した空き家を売却する手順
空き家の売却に関わる税金

相続した空き家を売却した方が良い理由

空き家を相続し有効活用していない場合は売却するのがおすすめですが、空き家を放置することで様々なリスクを抱えることになるのが理由です。
たとえば家は放置することで経年劣化が進み、倒壊する危険性のある状態になると「特定空き家」に認定されることがあり、そうなった場合は固定資産税の優遇措置撤廃や解体命令を受けることもあります。
また、劣化していなくても維持費がかかり、草むしりや換気といった手間もかかります。
このようなリスクや手間、費用負担から逃れるためにも、空き家の売却がおすすめといえます。

空き家を売却する際のポイント

相続した空き家を売却し手残り額を最大にするためには、いくつかポイントがあります。
この章で詳しく解説しますので参考にしてください。

名義を確認する

相続した空き家を売却する場合は、まず名義を取得しているかどうかをチェックする必要があります。
相続登記は義務ではないため、稀にそのまま放置するケースがあります。
この場合は全部事項証明書と所有者が異なってしまうため相続登記をすることになり、余計な手間がかかってしまいます。
また、所有者が一人ではなく共有名義となっている場合、売却するためには共有者全員の合意が必要となります。
このことからも、トラブルを避けるためにも名義の確認は必須といえます。
なお、相続登記については令和6年4月より義務化されることになり、所有権の取得を知ってから3年以内に登記しなければならないため、注意が必要です。
【参考サイト:相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局

3000万円の控除を利用する

相続した空き家に一時居住していた場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用することが可能です。
この特例は空き家を売却した際にかかる譲渡所得税の課税額を3,000万円控除することができ、大きな節税効果が見込めます。
そのため、利用できるかどうか必ず確認することをおすすめします。
ただし、この特例は居住していなければ利用できず、居住していた実績があっても空き家になってから3年を超えた時点で利用できなくなります。
このことからも、空き家になったタイミングと売却のタイミングを合わせておくことが重要です。

複数社に査定を依頼する

家を少しでも高く売却したいのであれば、複数の不動産会社に査定依頼するのがポイントです。
売却価格を決めるためには相場を知る必要があり、不動産会社が提示する査定額は参考にすることができますが、査定額は不動産会社によって異なります。
さらに、査定額の提示と同時に売却の流れやプランの提案を受けることもできます。
つまり、複数の不動産会社にコンタクトすることで査定額の平均値を把握することができ、さらに様々な売却プランを知ることができます。
このように、多くの情報をベースに不動産会社の選定と売却価格の検討ができることから、なるべく多くの不動産会社に査定依頼することが重要です。

相続した空き家を売却する手順

空き家を相続し売却するためには、この章で解説する手順を踏む必要があります。
どの手順にもポイントがあるため、売却前にチェックしておくことをおすすめします。

相続が確定した後の手続き

相続が確定した場合、行政書士や司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼する必要があります。
この書類には遺産相続がどのように分配されるのかが記載されており、この内容に基づいて相続登記が実施されます。
そのため、後から空き家の所有権で揉めることがないよう、しっかり書面に残しておくことがポイントとなります。
なお、遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が必要となることから、内容は関係者全員で協議し作成することになります。
つまり、相続人の数や遺産の内容によっては長引く可能性があることも、知っておくべきです。

不動産業者と契約する

複数の不動産会社に査定依頼し、販売を依頼する不動産会社を決めた際に媒介契約を締結します。
この契約によって不動産会社は委託された物件を販売することができ、買主の捜索をスタートできます。
ただし、媒介契約には「専属専任」「専任」「一般」の3種類があり、依頼できる社数や販売報告頻度が異なります。
そのため、契約を締結する前には次の特徴を把握していくことをおすすめします。


契約種類 契約社数 自己発見取引 販売報告頻度
専属専任 1社 不可能 7日に1度
専任 1社 可能 14日に1度
一般 複数 可能 報告義務なし

売却までの流れ

不動産会社が販売をスタートすると内覧を受けることになり、売主として対応することになります。
その際には現地で待機し鍵を開けたり換気をする必要がありますが、不動産会社に鍵を預けることで任せっぱなしにすることも可能です。
ただし、スピーディーに売却するのであれば草むしりや家屋内の掃除をしておくことがポイントです。
そして、購入申込書の提示があれば内容を確認し、合意することで売買契約に進みます。
不動産売買契約には引き渡しに関するお互いの約束事が記載されており、内容を買主と売主が確認し署名押印することで締結されます。
その後、買主と売主双方の準備が整った時点で引き渡しを行い、同時に売買代金を受け取ることになります。
なお、固定資産税の清算金など他に精算すべき費用がある場合は、引き渡し時に精算するのが一般的です。

空き家の売却に関わる税金は?

空き家を売却した際に受け取った売却代金に対し、税金がかかります。
つまり、売却代金は全て手残り額になるわけではなく諸費用や税金面を差し引く前提で検討すべきといえます。
この章では相続した空き家を売却する際にかかる代表的な税金として、「相続税」と「所得税」、「住民税」について解説します。

相続税

相続税は基礎控除やその他税制優遇を受け、残った取得金額に応じて計算されます。
また、税額は国税庁によって次のように定められており、相続前にある程度チェックしておくことをおすすめします。


法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

たとえば空き家を相続し評価額が3,000万円だった場合、3,000万円×15%-50万円=400万円が相続税となります。

所得税

相続した後に空き家を売却した場合には譲渡所得税がかかりますが、所有期間が5年以内か5年を超えるのかで次のように税率が変わります。
そのため、手残り額を増やすためには空き家の所有期間が重要なポイントになるといえます。


所有期間 所得税 復興特別所得税
短期譲渡所得 30% 2.1%
長期譲渡所得 15% 2.1%

上記のように、短期譲渡所得の方が長期譲渡所得よりも税率が倍になるため、注意が必要です。

住民税

空き家を売却することで所得税だけでなく、住民税も増えることになります。
そして、所得税と同様に短期譲渡所得と長期譲渡所得によって変わり、短期譲渡所得は9%、長期譲渡所得は5%が税率となります。
そのため、前述した所得税と合わせると短期譲渡所得は課税額に対して39.63%、長期譲渡所得は20.315%を掛け合わせた額が所得税と住民税の合計となります。

まとめ

空き家を相続し売却するケースは年々増加していますが、空き家の所有者が不明なまま売却した後からトラブルに発展するケースも少なくありません。
こうしたトラブルを避けるためにも、名義の確認や相続登記の実施、売却の手順を確認しておくことは重要です。
また、空き家を売却することで受け取る売却益に応じて税金が発生するため、手残り額を正しく把握するためにもある程度税額を計算しておく必要もあります。
こうしたポイントは不動産会社から受ける提案にも含まれていることから、不明点がなくなるまで不動産会社に質問することもポイントといえます。

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