分譲マンションを購入して賃貸マンションとして入居者を募集するマンション投資は、毎月の家賃が主な収入源となります。
しかし賃貸物件の維持管理は費用がかかることから突発的な修繕費や物価高騰の影響によって収益が悪化することもあり、場合によっては賃料だけで賄えなくなることもあります。
そのため賃貸経営を一定期間継続した後にマンション売却を検討するオーナーも多く、賃料+売却益でプラスになるよう計画立てることがマンション経営のセオリーといえるでしょう。
この記事では不動産投資におけるアパート売却のタイミングと見極めるポイントについて、解説します。
アパート売却に有利なタイミング
賃貸管理を継続している限り家賃収入を得ることができるため、いつアパートを売るべきか悩んでしまうオーナー様も多いでしょう。
その一方で建物の築年数が古くなると設備の劣化や共用部分が破損してしまうため資産価値が下がり、家賃相場よりも低い賃料で値下げ交渉されるケースも少なくありません。
このような状態に加えて空室が増えるとさらに収益性が悪くなり、その結果アパート売却の金額も下がってしまいます。
このことからも、所有しているアパートを最適なタイミングで売却できるよう、事前に計画を立てておくことが必要です。
築20年以内の売却がおすすめ
アパートは築年数が古くなるにつれ修繕積立費が高くなり、その結果共益費の負担が多くなってしまいます。
また耐震性が低くなると大規模修繕工事が必要となることから、老朽化が進まないうちに売却してしまうのがおすすめです。
一般的には築年数が20年以内であれば建物の資産価値も残り、さらに管理戸数が多く入居率が高ければ買い手もつきやすい物件となるでしょう。
これ以外にも不動産管理会社に管理を委託しているなど、清掃などの管理業務や管理組合が正しく機能していることも相場より高く売るためのポイントとなります。
所有期間5年以下の場合は税金が割高になるので注意
取得した不動産を売却する場合、利益に対して税金が発生します。
この税金は譲渡所得税と呼ばれ、以下の計算式で算出された売却益が課税額としてみなされます。
売却価格‐売却にかかった諸費用‐購入費用‐取得にかかった諸費用
たとえば5,000万円で購入したアパートを7,000万円で売却した場合、課税額は2,000万円ということになります。
この課税額に税率をかけて譲渡所得税を算出することができますが、所有期間が5年以内と5年を超える場合では税率が以下のように変動するという注意点があります。
所有期間が5年以内の場合:39.63%
所有期間が5年を超える場合:20.315%
つまり、課税額が2,000万円だと所有して5年以内に売却すると譲渡所得税は約793万円となり、5年を超えると約407万円にまで削減できることが分かります。
このように、アパートの売却は賃貸の期間が5年を超えているかどうかを確認することが大切といえるでしょう。
売却で利益が出るタイミング(売却価格>購入価格+投資額)
不動産投資における「売却益」は家賃だけを収入とするのではなく、売却した際の手残り額も含めて計画することが重要です。
そのためには0円の空き家などなるべく安く物件を購入し、リフォームなどの初期費用を抑えることがポイントとなります。
またアパート経営には建物管理を管理業者に委託することで管理料がかかり、固定資産税の支払いも必須です。
そこで、月々の賃料で維持するコストを補い、購入価格と投資額を超える価格でアパートを売却することで確実に黒字化させることができます。
このように、全体を通じて不動産投資がプラスになることをイメージしておくことがポイントといえるでしょう。
減価償却を終えたとき
減価償却とは不動産の購入費用やリフォーム費用を一度に計上するのではなく、数年から数十年にわたって計上する仕組みのことです。
この仕組みによって毎年一定の節税をすることができるため不動産投資においては重要なポイントといえますが、建物の構造やリフォームの内容によって減価償却できる年数は決まっています。
このような特徴がある減価償却が終了してしまうと、翌年の納税額は上がってしまいます。
そのため、アパートの売却を決めるタイミングとして検討しておくべきでしょう。
なお、土地は減価償却できないことから、土地の価格割合が大きい物件を購入する際には注意が必要です。
【参考サイト:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁】
空室が多い場合も売却を検討する
アパート経営をしていると市場の変化や経年劣化によって、空室が目立つようになる時期もあります。
このような状況を改善しようとすると賃料の値下げや大規模修繕工事が必要になるため、収益が悪化する可能性が高くなります。
そこで、空室が増え改善のための支出が多くなる場合はアパートを売却し、投資を終了させるのがおすすめです。
こうすることでリスクだけが高い投資を避けることができ、さらに効率の良い投資に回せる資金を確保することができるでしょう。
ただし空室が目立つ原因が卒業や入学などの時期だけに限定される場合は一時的な問題であることも多く、すぐに満室状態に改善する場合は売却を再検討しましょう。
アパートを売却する手順
アパートをスムーズに売却するためには手順を事前に把握しておく必要があります。
なぜなら不動産の売却は用意しておく書類の準備や売却後の確定申告など、売主としてやっておくべきステップが多いからです。
特にアパートの売却は1棟ではなく土地として販売するケースもあり、その場合は住民の退去が必須です。
このことからも、将来アパートを売却することに備えてこの章で解説するポイントを押さえておきましょう。
査定を依頼する
まずは不動産会社に査定を依頼し、複数社から見積を取得することからスタートします。
査定額はアパートの収益性や周辺環境、現時点での資産価値などを勘案し計算されることになりますが、1棟アパートの販売は一般的な戸建てや1室のマンションよりも難しく、不動産会社によって査定額がバラつくことが多いです。
そのため査定は必ず複数社に依頼することがポイントです。
また、入居者が少なく改善の見込みがないアパートは土地として売却することも検討することになり、その場合は入居者に退去料を支払って退去してもらうことになります。
このように、査定額と売却プランを比較検討しながら不動産会社を決めるのが最初のステップとなります。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
不動産会社が決めれば媒介契約を締結し、販売を依頼する会社を選択します。
媒介契約とは不動産会社と締結する委託契約のことで、専属専任媒介契約、専任契約、一般契約の3種類があります。
それぞれ次のような違いがあることから、自分に合った契約形態を選択しましょう。
媒介の種類 | 更新期限 | 最大依頼数 | 販売報告 | 自己発見取引 |
---|---|---|---|---|
専属専任媒介 | 最大3ヶ月 | 1社のみ | 1週間に1度 | 不可 |
専任 | 最大3ヶ月 | 1社のみ | 2週間に1度 | 可能 |
一般 | 期限なし | 制限なし | 規定なし | 可能 |
売却活動を進める
依頼する不動産会社が決めればいよいよ販売開始となりますが、販売は不動産会社に一任するため売主として特にやっておくことはありません。
不動産会社は紙媒体やインターネットの広告、ポータルサイトを使って買主を募集し、問い合わせがあれば紹介と物件の案内をします。
そのため売主は販売を不動産会社に任せ、買主の購買意欲が高くなるよう物件の草むしりや管理に専念することがポイントとなります。
買手と売買契約を結ぶ
買主から購入申込書の提示を受け、内容に合意すれば売買契約の締結となります。
売買契約には引渡しに必要な約束事が記載されており、売主と買主は期日までに準備を進めることになります。
契約条件に建物解体や確定測量がなければ特に売主がやるべきことはないですが、登記識別情報通知や権利証といった所有権を示す書類は必須となるため事前に準備しておきましょう。
なお、これらの書類は再発行することができず、決済するためには司法書士との事前面談と追加費用が発生するため、契約後の注意点といえます。
決済・引渡しを実施する
買主と売主の準備がそれぞれ完了すれば、決済と引渡しを行います。
一般的に売主が全ての支払いを受けた時期を所有権移転登記の時期とし、所有権移転の手続きが完了した時点でアパートの引き渡しも完了します。
そのため売主はアパートに関連する書類や鍵などを全て決済日に持参し、買主に渡す必要があるのがポイントとなります。
無事に決済と引渡しが終了し、翌年の確定申告をすれば売却完了となります。
なお、買主がローンを組む場合は金融機関で行うことになり、さらに法務局が開いている時間帯で実行する必要があることから平日午前に決済をするケースが多いです。
このことからも仕事の都合を事前につけておきましょう。
アパートの売却にかかる費用
アパートを売却する際には、一般的につぎの費用がかかります。
これらの費用を売却価格から差し引いたのが手残り額となり、次の投資に使える資金となりますので各費用を正しく把握した上で売却することが大切です。
各費用 | 内容 |
---|---|
印紙代 | 売買契約書に貼付する印紙の代金となっており、貼付した印紙を消印することで納税となる。 印紙代は売買代金によって変動し、国税庁によって定められている。 なお、契約書の原本を不要とした場合は免税にすることができる。 |
登記費用 | 所有権移転登記にかかる費用。 多くの地域では買主が負担することになるが、場合によっては折半になることもある。 なお、抵当権が設定されている場合は1,000/本の費用が必要。 |
仲介手数料 | 仲介を依頼した不動産会社に支払う手数料のことで、売買代金によって以下のように変動する。 200万円以下:取引金額の5%+消費税 200万円を超え400万円以下:取引金額の4%+2万円+消費税 400万円を超える場合:取引金額の3%+6万円+消費税 |
その他費用 | 解体費用、確定測量費、司法書士との面談費用などは不動産の状態と契約条件によっては発生する。 そのため事前に不動産会社へ相談し、なるべく正確な費用を算出してもらうことがポイント。 |
まとめ
アパートを使った不動産投資は安定性が高いことから多くの投資家に人気の手法となっており、物件によっては少額からスタートできるため初心者にもおすすめです。
その一方で経年劣化による修繕費高騰や空室の増加によって収益が悪化するケースもあり、アパート経営のリスクともいえます。
このような状態になってしまうと健康な投資を続けることが難しくなるため、アパート売却を検討するようにしましょう。